旅の2日目の朝、富山県に入り目の前には、見渡す限りの広大な田んぼが広がっていました。ちょうど、黄金色の穂が頭を垂れる、美しい稲刈りのシーズンです。先人たちから続いてきた暮らしの営みがそこにありました。
その豊かな風景のなかに佇む道の駅に立ち寄り、そこで出逢ったのが、収穫されたばかりの新米でした。「ふふふ(富富富)」という、なんとも愛おしい名前の銘柄です。こうして旅の途中で、黄金色の田んぼを眺め、その土地の生きた恵みに出逢い、素朴な喜びをそのまま受け取る。それだけで心地よい余白が広がっていくものです。
黒部川の「愛本(あいもと)のはね橋」のあった場所へ。そこは、険しい黒部峡谷の出口にあたり、山を切り裂くように流れてきた激流が、広大な平野へと一気にひらけていくところです。自然の圧倒的な急流のなかに無理に柱を立てることをせず、両岸から木をせり出させる知恵で架けたという歴史に触れました。はね橋のあったところから眼下を見渡すと、美しくひろがる「黒部川の扇状地」が一望できました。険しい山々から運ばれてきたみずみずしい水と土砂が、長い年月をかけて扇の形のように優しく、丸くひらいた豊かな土地。さっき出逢ったお米は、この広大な大地と、山々から流れてくる水に育まれたんだなと改めて実感。上流へと視線を向けると、そこには険しく切り立った深い谷がどこまでも続いており、そこを溢れんばかりの豊富な水が、勢いで轟々と流れ落ちていました。激しい水流は、ただ大地を削るだけでなく、こうして命を育む平野をも創り出している。
さらに黒部川をさかのぼり、黒部峡谷の玄関口である宇奈月へと向かいました。宇奈月温泉駅からは自分の足で宇奈月発電所、さらにその先にあるダムの施設へ。たどり着いたダムの施設で出会ったのが、この地域の自然と地質を立体的に表した、とても綺麗なジオラマの解説でした。






昼食をとったあとは、トロッコ列車に乗って「猫又(ねこまた)」までの往復の旅に出発しました。険しく切り立った黒部峡谷の奥深くへと入っていきます。断崖絶壁に張り付くように作られた線路や、巨大なダム、発電所の数々。その景色を見つめながら、険しい大自然のなかにこれだけのものを作り上げた、人間の力に対する驚き。
それは一見、自然を人間の都合で切り開き、支配しようとする消費主義のように見えるかもしれません。けれど、人々の暮らしを守る生活や工業の発展、そしてこの美しい温泉街や観光へと、人間が自然への畏敬の念を持ちながら、折り合いをつけて共に生きてきた、もうひとつの調和の歴史なのかなと感心させられました。

宇奈月の温泉街の散策と足湯からのトロッコの見送り、宇奈月神社へと立ち寄り、旅の2日目の締めくくりは、宇奈月温泉の日帰り温泉へ。大地の温もりとお湯の優しさに包まれながら、出会った豊かな水の巡りが、心地よく身体の内側へと染み渡っていきました。
(第3話へ続く)


