今、きらきらの軒先では、夏の日差しのもと、いきいきと育った植物たちが目に眩しいです。ローズマリーやラベンダー、ペパーミントにレモンバーム、そしてローズゼラニウム。さらには、私たちの暮らしに深く根差したよもぎやしそ、ネギや茗荷(みょうが)、葉しょうがといった和のハーブたち。瑞々しい緑が生き生きと茂り、風に乗って爽やかで心地よい香りが、特に触れるとさらに強く感じられます。
近づくだけで頭、気持ち、身体がスッキリしたり、はーと解けたり。
優しさに包まれるようなラベンダー や清らかな香りとレモンバームの甘酸っぱい香り。どこか懐かしく凛としたローズマリーの芳香に、鼻を抜けるペパーミントの清涼感。そこへバラのように華やかで甘いローズゼラニウムの香りと、しそや茗荷のどこかホッとする瑞々しい和の香りが重なり合います。これらの香りにふっと鼻をくすぐられると、どんなにせわしなく働いていた頭(知性)も、一瞬で「今、ここ」の身体へと戻ってきます。
知性を介さず、ダイレクトに脳へ届く「リセットボタン」
私たちは普段、言葉や理屈で自分を納得させようとしがちです。でも、香りは違います。
嗅覚は、五感の中で唯一、脳の「考える部分(大脳新皮質)」を通らず、本能や情動を司る「大脳辺縁系(感じる脳・本能の脳)」へとダイレクトに届くセンサーです。「いい香りだな」と感じたとき、すでに身体はふっと緩み、呼吸は深くなっている。知性が追いつく前に、脳の深い部分ではすでに安全や安心のスイッチが押されているそうです。
私自身、これまで何度もこの”香りの力”に助けられてきました。
心身が疲れ切ってしまったとき、高品質なオイルを直接身体に塗ってそのエネルギーを肌から取り入れたり、香りを深く吸い込むことで折れそうな心を何度も整えてもらいました。オイルの元になっている植物をそばに置いたらいいのでは?と思い、植物を育てるようになりました。

日常の中に、身体と語らう「しつらえ」を
だからこそ今でも、日常の中に「香り」を取り入れることを大切にしています。
軒先で育つ植物たちの葉に、ふとした合間にそっと触れ、立ち上る香りで心身をリフレッシュさせる。こうした日々の小さなしつらえが、私を支えてくれているもののひとつです。
ふと目を向ければ、ローズマリーの細く濃い緑や、ペパーミントの力強いギザギザとした葉、ツヤツヤとしたしその葉は、溢れる生命力を感じさせてくれます。一方で、レモンバームやよもぎの明るく柔らかな緑は光を優しく透かし、ラベンダーの淡い紫色の花や、ひっそりと顔を出す茗荷の芽が、風に揺れながら美しく佇んでいます。
香りに癒やされ、その色や姿にも惹きつけられる。
そうして五感を一つひとつ開いていくことは、外側の喧騒から自分を守り、心の中に『静かな聖域』を作る作業のひとつなのかもしれません。
セッションで「本来の自分」を招き入れる
どちらが良いということではなく、その多様な色、形が重なり合っているのが美しいのです。
私たちの身体も同じかもしれません。
凛と張り詰めた強さが必要な時もすれば、光を透かすような柔らかさが必要な時もある。
きらきらのセッションでも、この「感覚の再起動」を何より大切にしています。
施術室では、ふっくらと愛らしい葉をもつアロマティカスが、すぐそばで優しくお客様を見守ってくれています。その日の空気や季節に合わせた高品質なアロマを噴霧し、香りの力を借りて脳の緊張をほどくことから始めます。
滞っていた神経のネットワークに再び風を通し、身体の隅々まで情報を届ける。神経系が整うと、それまで感じ取れなかった微細な香りの変化や、光の眩しさ、そこで自分自身の呼吸の深さに、改めて気づけるようになるのです。
身体という「静かな相棒」とのつながりを取り戻す
古くからローズマリーは「記憶や思い出の象徴」とされ、外側に散らばってしまった意識を呼び戻し、自分自身の原点に立ち返らせてくれる聖なる植物としても大切にされてきました。
私にはその植物たちの姿が、慌ただしい日常で迷子になりそうな意識を呼び戻し、自分という器の中に「本来の自分」を招き
入れる手助けをしてくれているかのように思えます。
もし、考え事が止まらなくて眠れなかったり、自分の感覚が分からなくなったりしているのなら。
まずは手元にある葉をそっと撫でたり、お気に入りの香りに鼻を近づけてみてください。
「あぁ、いい香り」というその小さな実感が、知性の暴走を止め、身体とのつながりを修復する第一歩になります。
思えば、私の周りに集まってくれた植物たちは、ただそこに佇んでいるだけで、私たちの心身をそっと支える目に見えない優しさを秘めています。散らばった意識を今ここに戻してくれるローズマリーや、心身の緊張をゆるめるラベンダー。イライラを吹き飛ばすペパーミントに、疲れた神経を包み込むレモンバーム。乱れがちな心のバランスを甘く優しい芳香で整えてくれるローズゼラニウムに、ふっと不安を和らげてくれるアロマティカス。
それだけではなく、古来からの万能薬草であるよもぎは冷えた心と身体をぽかぽかと温め、しそは滞ったエネルギーを巡らせてくれます。茗荷やネギ、葉しょうがのピリッとした香りは五感を刺激し、夏のどんよりした重さを吹き飛ばして、身体にシャキッと活力を与えてくれるのです。
午後の日差しを浴びて香りが濃くなるように、私たちの感覚もまた、ふとしたきっかけで鮮やかに色づき始めます。
香りに誘われて深い呼吸が戻るとき、私たちは「思考を運ぶ乗り物」ではなく、血の通った、豊かな感覚を持つ「生命」としての自分を取り戻します。
今(今日)、あなたはどんな香りにハッとしましたか?
今回の内容が、あなたの日常を少しでも軽くするきっかけになれば幸いです。



